「牽星過洋」は、歴史的な重みと映像的な印象を与える言葉です。

• 「牽星」 は、中国古代の航海技術である「牽星術」 を指します。これは北極星などの星の高度を観測して船の海上における緯度を測定する方法で、遠洋航海には不可欠な技術でした。

• 「過洋」 は、大海原を渡る壮大な旅を描写しています。

この書名は、福建の人々が高度な航海技術を駆使して海洋を渡り、東南アジア地域と緊密な関係を築いてきたという本書の核心的なテーマを表しています。

本書は地域史と海洋史に関する厳格な学術研究書です。古代から近現代に至るまで、中国福建省と東南アジア地域の間で展開された多岐にわたる交流と相互作用を体系的に整理し、研究しています。

その核心的なテーマは、「陸地中心史観」を打破し、「海洋の視点」 から、福建が「海のシルクロード」及びグローバルな海洋ネットワークにおいて果たした重要な役割を強調することにあります。主な内容は以下の分野をカバーしています：

1. 歴史の脈絡の整理： 唐宋時代、特に明清時代以降の福建と東南アジアの交流の歴史的軌跡を詳細に追跡。朝貢貿易や私的な海上貿易の発展などを含む。

2. 経済・貿易往来： 双方の貿易商品（中国の陶磁器、絹、茶と東南アジアの香辛料、珍宝など）、貿易ルート、主要港湾（泉州、月港、広州など）、そして貿易モデルの変遷を深く分析。

3. 移民と華僑社会： これは本書の重点の一つ。東南アジアへの福建人（特に閩南人）の移住の過程、動機、分布、さらに現地で形成された華僑社会や会館組織を研究。華僑が故郷・福建と東南アジアの居住国双方の経済発展に果たした多大な貢献についても考察。

4. 文化交流と融合： 人的交流と貿易を通じて、福建の文化（媽祖、保生大帝などの閩南民間信仰、建築様式、言語、飲食など）がどのように東南アジアに伝播し、現地文化と相互に影響し合い融合したかを探る。

5. 海路と航海技術： 福建と東南アジアを結んだ航海ルート、船舶製造技術、そして前述の「牽星術」などの航海科技について研究。

• 謝必震（編者）： 厦門大学南洋研究院（現在の国際関係学院/南洋研究院）の资深教授。中国と東南アジアの関係史、海外華僑・華人史の研究に長年従事し、数多くの著作を持つ。

• 吳巍巍（副編者）： 福建師範大学社会歴史学院の教授。研究分野は中外関係史、地域社会史など。

• 聶徳寧、張元（著者）： 厦門大学などの関連する学術機関の研究員。海洋史、中外経済貿易史の分野で深い学識を有する。