これは非常に重要な図説形式の学術教養書です。単なる地域史の記述ではなく、グローバル・ヒストリーと海洋文明の視点から、福建が中国乃至世界の歴史において担ってきた役割を再評価しようとする意欲作です。

「閩は海中に在り」という詩的な名称は、中国古代の地理書『山海経』の記述に由来します。これは、福建の歴史、文化、発展が海と切り離せない という本書の核心的な主張を見事に表現しています。福建は山が多く耕地が少ないという地理的環境から、人々は海に活路を求め、「海を田とし」、異国で商いを行ってきました。本書は、福建の文明が「黄色」の大陸文明ではなく、「青」の海洋文明であったことを明らかにします。秦漢から明清に至る2000年以上にわたり、福建がいかにして「海上シルクロード」の起点かつ中核地帯へと成長していったかを体系的に整理しています。

• 福州港、泉州港、漳州月港、厦门港という四大主要港の興亡と推移、そしてそれらがどのようにしてリレーのように中国と世界を結びつけてきたかを詳細に描き出します。

• 「図説」シリーズの一冊として、本書の最大の特色は数多くの貴重な図版を収めている点です。これらには以下が含まれます：

  • 古地図、古航海図

  • 歴史的遺跡の写真（泉州清浄寺、伊斯蘭教聖墓、祈風石刻など）

  • 引き揚げられた文物の写真（沈没船から回収された陶磁器、貨幣など）

  • 民俗活動の記録（媽祖巡幸など）

• この「図で歴史を証明する」手法により、歴史は直観的で生き生きとしたものとなり、読み物としての理解度と感染力が大幅に高められ、読者は歴史を「目で見て」理解することができます。

• 各時代の海洋貿易（第1章に対応）

• 主要港と商品（第2章に対応）

• 鄭和の南海大遠征が福建を基地とした歴史（第3章に対応）

• 東南アジアにおける福建系移民（華人）のコミュニティ形成と文化伝播、特に媽祖信仰（第4章に対応）

• 現代中国が「21世紀海上シルクロード」構想を推進する中、本書は歴史を遡ることで、以下の点を深く示唆しています：

• 開放、交流、繁栄にとっての海洋の重要性。

• 中国と東南アジア、そして世界を結びつける上で、福建が果たした独特な役割。

• 歴史的に華人・華僑が中外文化交流と経済協力を促進する上で果たした橋渡し的役割。