呉鎮は「漁隠」という題材の山水画を描き彼の幽居の高尚さと優雅な生活理想を表現しました。
彼は生涯に多くの「漁父図」を制作しましたが現存するのは4点で
その風景は基本的に類似しています。
この絵は高く遠くの構図で平らな丘と山が描かれ煙雲の中に隠れています。
奇妙で古い木々は枝や幹が曲がりくねり傾斜しています。
小さな小川が山から蛇行して流れ大きな湖に合流します。
漁師が笠をかぶり片手でオールを持ち、もう片手で釣竿を持って船に乗り、
湖の静かな水面で釣りを楽しんでいます。
筆致は円滑で境界は謎めいて深いです。
絵には秀逸で自由な草書が自題として添えられています。
「目は煙波に断たれ青さが有無を問う。
霜が紅葉を凋落させ錦のような模様がぼやける。
千尺の波、四鰓の魚、詩の筒が酒のびんと向き合う。
至元二年の秋、八月。梅花の道人が遊びで『漁父図』を四幅描き詩を添えました。」
印は「梅花庵」、「嘉兴吴镇仲圭書画」とあります。
全体の絵は墨の色が深く濃厚であり筆の力強さと清澄さがあり雰囲気が広々としており、
気品ある超然とした趣があります。
詩、書、絵が互いに補完し合っています。

吴镇は董源や巨然の画法を吸収して湿った墨を用いて茂みのある風景を描くことに長けていました。
筆の力は雄々しく墨の勢いは厚みを持ち董其昌は彼の作品を「蒼蒼茫茫、林の下の風」と評しました。
この「漁父図」は彼の代表作の一つです。