王鐸（おうたく）の書風概要：

王鐸の書法は筆力が雄強で濃厚で華やかな筆致を持ち行、草、隷、楷などの各体において
優れた技巧を発揮しました。
特に行草書で高い成就を見せ行書は主に大きな横長のスクロール作品によって成り立っており、
草書の創作は主に長巻に集中しています。

これらの伝世の長巻作品において王鐸は正と側、虚と実、軽と重、円と折れなど、
高度な筆墨技法を豊富に用いて点画線の視覚的特性と行草書の表現力とを完璧に融合させ、
合理性の中で感性を解放して天人一体の書学的境地に達しました。
多くの手巻きの作品は青々しく雄大で大気を帯び縦横に流れ、起伏に富んでおり、
「極まる勢いもまた、勢い尽きぬかの如し」といった新たな意味を法度の中に生み出しました。
その深い功力はほぼ全てが優れたものであり一度の失敗もほとんどありません。

巨大な横幅の作品において章法は揺れ動き跳躍し、文字の大きさが展開され、傾斜し、
上下に欹侧するなど筆の動きが滑らかと断続が交錯して円転して気を貫き、
折れて鋭い勢いを持っています。
筆力は重厚で風神は自然に生まれます。
同時に冷静で理性的な筆運びに加えて墨の濃淡などの技法を大胆に取り入れることで、
作品は見る者の心を揺さぶるような雄大な気勢を示して感染力に富んでいます。
また彼の連綿とした大草の「一筆書き」スタイルの模写は書道史上の新しい試みです。
王鐸は緻密な筆法、多彩な字法、章法、墨法を駆使して
伝統的な行草書の形式と大幅な縦軸の調和を完璧に実現して大幅な作品の
「持続的な鑑賞性」の難点を克服して明代に登場した大幅な立て軸の書法形式を
独自のものにしました。
これにより明清時代の行草書の最高峰を築き上げました。